おはようございます!
「前門の虎、後門のオオカミ」とはこういう状況を言うのかもしれません。一方にリセッション。もう一方に数十年ぶりの高いインフレ。5月の米雇用統計では雇用者数が予想を上回り、リセッション懸念を少しは遠ざけたと同時に、米連邦公開市場委員会(FOMC)による積極利上げへの懸念を再燃させました。インフレは退治しなくてはならない虎ですが、そのための利上げはリセッションというオオカミを招き入れる危険があります。傷は浅くても長引くのか、痛みは強くても早く癒えるのか、様々な思惑が交錯する市場では、10日発表の5月消費者物価指数(CPI)統計に注目が集まります。以下は一日を始めるにあたって押さえておきたい5本のニュース。
目をつぶる
米国は2015年イラン核合意の再建を待たずに、イラン産原油の供給拡大を容認する可能性があると、世界最大の独立系石油商社ビトル・グループが指摘。合意再建を目指すイランと関係国による協議は3月以降、停滞しており、妥結を悲観する見方が広がっている。ビトルのアジア責任者、マイケル・ミュラー氏は「アンクル・サム(米政府)は石油の供給がもう少し増えるのを容認するかもしれない」と語る。「ガソリン価格を下げる必要性が中間選挙最大の争点となれば、原油輸出に対する制裁にもっと目をつぶっても良いだろうという結果になるかもしれない」と説明した。
理にかなう
レモンド米商務長官はインフレを抑える方法として、一部の財に対する関税を撤廃することは「理にかなうかもしれない」と述べた。CNNとのインタビューで「鉄鋼とアルミニウムについては、関税を維持することを決定済みだ。米国の労働者と鉄鋼産業を守る必要があるからだ」と発言。一方で、「家庭用品や自転車など、(関税撤廃が)理にかなうと考えられる商品もある」と答えた。「バイデン大統領はこれを検討している」とレモンド氏は述べた。米国はトランプ前大統領の下、中国からの輸入品約3000億ドル(約39兆2640億円)に対する関税を導入した。
日本や中国など
サウジアラビアはアジア向け原油販売価格を予想以上に大きく引き上げた。国営石油会社サウジアラムコは、7月積みアジア向け標準原油アラビアン・ライトのOSPを1バレル当たり2.10ドル引き上げ、指標価格を6.50ドル上回る価格にした。ブルームバーグが製油所やトレーダーらを対象にまとめた調査では、1.50ドルの引き上げが予想されていた。サウジの原油輸出は中国や日本、韓国、インドをはじめとするアジア向けがその60%以上を占める。
不信任投票
英与党保守党内でジョンソン首相への不信任の動きが広がっており、早ければ今週にも投票が行われる可能性があると、首相に近い関係者が明らかにした。首相の不信任投票を実施するために必要な54議員からの書簡が集まる瀬戸際のようだが、実際に投票が行われてもジョンソン首相は勝利する自信があるという。首相を退陣に追い込もうとしている議員の1人は、投票に必要な議員数はすでに確保されたとの見方を示した。
FRB次第
米経済のリセッション(景気後退)は必ずしも差し迫ってはいないのかもしれない。労働市場の持続的な力強さや、2兆ドル(約262兆円)余りに上る家計のバランスシートの余剰資金を踏まえれば、近い将来に景気後退に陥る公算は小さいとエコノミストの大半は主張する。ムーディーズ・アナリティクスのチーフエコノミスト、マーク・ザンディ氏は「リセッションに陥ることなく乗り切るのではないかと引き続き考えている。ただ、リスクは非常に高いため、とてもぎりぎりであるのは明白だろう」と語った。
Source : Bloomberg